「由綺はまだ手の届くところにいる」と理奈は冬弥に言うが、その「空気」のような日常の存在であったはずの由綺とは齟齬をきたしている。段々と距離が遠ざかりつつあるように見える二人。学祭前のゲネプロの準備に追われる美咲さんが、現在の冬弥の日常に見える「WHITE ALBUM」第8話。
由綺の対抗馬にしては人が良すぎるような気もする芸能界の先輩理奈だが、スタジオの駐車場でする冬弥との会話は、他のヒロインたちと比べて生い立ちや心情を最も掘り下げたシーンだ。
歌手引退後、緒方が理奈にかけた期待と、完成してしまった玩具に飽き始めたギャップに戸惑っているような理奈だが、表だって反発したりする様子はない。それは2年間の活動の成果に裏打ちされた絶対的な自信によるものだろうが、仮面の下に復讐心を秘めたりはしていないのだろうか。
由綺にかかりきりの兄と弥生にしっぺ返しの布石を打っているとは見えないが、冬弥への興味もその一つだとは穿ちすぎだろうか。直接的ではないだけに、思わぬところに打たれた石に冬弥も我々も気付いていないだけかも知れない。
緒方はさなぎが蝶に羽化する刹那を愛でたいがために由綺に入れ込んでいるのだろう。理奈が語る緒方からは、ナルシストでいわゆる「アーティストらしさ」が溢れる姿が見える。彼にとって変わらない「日常」などは罪悪。同じ由綺の歌声を聞いて緒方は可能性の煌めきに胸が苦しくなり、冬弥は変わらなすぎる「日常」、正確には「日常だった彼女」を感じて胸が苦しくなる。この相譲れない一線を越えて由綺が向かう先には冬弥が望む日常も永遠もない。
マナはこの物語のヒロインと言うよりは観察者のポジションに置かれている。はるかにとっては座敷童だそうだが、サブルート的に進むはるかの物語に観察しながらも関与している。但し、当初は事件の当事者が冬弥だとは知らないフシがある。
そして冬弥の恋人の「由綺」が「森川由綺」とは認識していない。
帰らぬ冬弥のアパートで「お兄ちゃん…」と泣いた前回から、夜の町をさまよい男たちに因縁をつけられるはるか。マナが偶然なのか尾行していたのか知らぬが、前回すれちがうカットがあったからマナにははるかに感じるところでもあったのかも知れない。
2年前の受験時に母が死に、折り合いが悪い父と離れて一人アパート暮らしで大学に入学した兄と言うのはマナの兄ではなく、冬弥の事を本人から聞いた上で比喩しているのだが、はるかへの気休めの言葉に過ぎないのだろう。自らの家庭環境の空虚さを埋める、自分語りだったのだろうか。それが冬弥に重なるとはるかが気付いたときには、マナの姿はない。
理奈の誕生日、冬弥はプレゼントを持ち理奈から渡されたスケジュールをもとにレコーディングスタジオへ。理奈のスケジュールは知っていても、由綺のスケジュールは知らない冬弥。それとも実は由綺のスケジュールを渡していたのか。理奈に試されたのかも知れない。
プレゼントを手渡すところを由綺に見られたバツの悪さ。理奈は平然としたものだが、久しぶりに会った由綺と冬弥の言葉は少なく、座る位置も遠い。
弥生さんも手紙や電話でストーキング被害にあっているようだから、彼女の掘り下げもあるかも知れない。
冬弥を送る弥生さんから、車中での「お仕置き」のキス。前回の「ご褒美」のキスには抵抗したが、舌と腕を絡ませる今の冬弥が心で詫びるのは由綺に対してではなく、帰りが遅くなることの美咲さんへの詫び。
ひびが入り始めた由綺との関係に、弥生さんが打ち込む肉弾攻撃のくさびは決定的な亀裂になるのだろうか。なかなか会えなくて「ゴメンね」と繰り返していた由綺だったが、今度は冬弥が「ゴメン」と負い目を背負いながら謝り続けないとならないのだろう。
非日常の弥生さんから帰った先には日常の美咲さんがいる。地味な彼女だが学祭イベントがらみでトラップが待っているだろう。気弱そうな美咲さん、イヤと言えない状況にハメられれば冬弥相手なら断らないはず。地雷でなければ良いのだが、由綺の電話に「家の手伝い」と誤魔化した負い目が吉凶いずれに転ぶか。
視聴率で桜団に負けた緒方プロ。アリーナイベントを譲って、逆転の秘策は何か?
由綺が理奈の歌を練習していることに関係があるのだろうか。理奈が緒方に話していたアイディアなのだろう。


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