AT-X開局10周年記念作品「Mnemosyne-ムネモシュネの娘たち-」最終話。
元から視聴年齢制限付きでAT-Xだけの放送だが、グロの序盤でさらに視聴者を振り落としたシリーズ構成は潔いとさえ思える。時代も話数を重ねるたびに過去から未来へと進むが、不死者の麻生祇燐には千年の物語の一部を切り取ったに過ぎない。
燐を救った前埜美汐の父、祖父から遡る前埜家との関わりも明かされて、シリーズ当初に想像したよりは救いのあるエンドではあった。
グロ・サディスティックな過去編から近未来へ話が進むたびにあっさりしてきた印象があるが、我々が未来を知らないのだから実感が無いためでもあるだろう。
ユグドラシルの守人たるエイポス、先代の守人は彼の父に当たる老天使との関係が明かされた。エイポスが燐に執着するのはユグドラシルの次の守人を産ませるため。ユグドラシルの本質は情報の集積システム。
このユグドラシルの仕組みとエイポスの企み、神の掌で遊ばれ娶られる燐と周辺の者のドラマの筋書きのオチはまとまりが良いものの、もっと汚れ堕ち荒んだ結末を望んだ者には肩透かしかもしれない。
それでもメインヒロインの燐を中心に置いて見ると、不死者の苦悩の反面、新たな守人となる喜びを効果的に描けていると思う。他のキャラの活躍が弱いのは仕方ないが、ミミの燐を守ろうとする意思はもう少し強く表現しても良かったかもしれない。美汐がミミに付き合い、ここまで来た動機も、好奇心や単に前埜の娘と言うに止まらず、やはり強い動機を示しても良いのではないだろうか。最終話を急ぎすぎたようで、少し残念だ。最終話は尺がないと言うよりも、制作の時間が足りなかったのではないだろうか。作画などもキャラの表情から感じられる雰囲気が、前話までと比較すると別人かと思うくらいに変わっている。
燐が囲われた中東風の城からは、プリンス・オブ・ペルシャの雰囲気が漂うが、この期に及んでもローラに燐を殺させる演出は蛇足ではないだろうか。首だけになって生き続けるローラがミミと美汐の道案内をする役目があったにしても、もう少しスッキリさせたほうが良かったかもしれない。
老天使と交わり新たな守人を産み出そうとする燐と、阻止しようとするエイポスの戦いもエイポスの勝利かと思わせて、彼は自らの策に溺れた。美汐が救出の手を差し伸べる中、かつての光輝の時竺の実から「白い血」を取り込んで受精した燐に過去の記憶のフラッシュバック。前埜家の祖先と彼女のつながりの伏線も回収。裸体のシーンは多かったが、一応は一般人の美汐は健全なポジションに置いて性的描写はしていない。
どれほどの時間が流れたか分からないが、城の中で燐とミミに美汐、そして燐の生んだ子供。燐に恩義を感じている輝紀は、自分が認知すると言っているが、前埜家の血筋から考えても自然ではある。
この先、ユグドラシルの守人となった燐とその子供の物語が始まるかも知れないが、アナザストーリーでもスピンアウトでもかまわないから、新宿の寂れた探偵事務所に降りかかる奇妙な事件に巻き込まれる燐とミミの物語をポツリポツリと描いてもらいたいと希望している。アニメでなくても小説でもコミックでもかまわない。
そして美汐が、なかなか良いキャラ立ちをしているから、もう少し活躍を見てみたいものだ。本人は財閥の後を継がないで遊ぶつもりでいるようだが…
シナリオも細かいところは微妙だが、アニメオリジナル原作は貴重。
エロ・グロを含む大人向けの内容で、セールスは厳しいかもしれない。DVD販売だけで回収できるビジネスモデルにも見えない。製作委員会メンバーを見ても、メディアミックスで横展開する気配は無さそうなところが、もったいない。できれば、もう少しこの世界に付き合ってみたいと思う。





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COMMENT
でたんだな、これが
>メディアミックスで横展開する気配は無さそうなところが、もったいない。
展開しちゃいました。
「ムネモシュネの娘たち2008」HJ文庫
ISBN-10: 4894257866; ISBN-13: 978-4894257863;
発売日: 2009/4/1
挿絵は当然中央東口。
HJ社が発行している雑誌「キャラの」で連載していた短編集です。
あとコミック「ヴァルキリー」でも漫画が短期間連載していたので
そちらも出てくる可能性があります。
Re:でたんだな、これが
延期していたようでしたが、もう出ましたか。この記事書いているときは、何も広がりはなかったのですが、貴重な関連本です。