過去には白いパンツじゃないズボンを穿いていた事が判明したミーナ隊長をフィーチャーした「ストライクウィッチーズ」第8話。きっとカールスラント空軍では支給品の制服ズボンの色は、階級により違うのだろう。
第7話のズボン騒動のお馬鹿回からつなぐには、ギャップの大きいシナリオで苦労している感じがあるけれども、それ以上に後半への伏線整理と過去から未来への切替えに意を注いでいるのが判る。
ミーナの私的な事情に限ってみれば、過去の想い出に思わぬ再会と新たな一歩までをドラマチックに描いている。その裏側では現在も未来も失いたくない人(坂本のことだろう)への公私の感情が複雑に入り組んだ決意を現して、珍しく1話で完結させずに次回へつないだ。
ハンガーの整備員や赤城の隊員など、男子との交流を禁止しているのはミーナ隊長の指令。彼女が失った痛みをウィッチーズに味わわせたくないとすると私情だが、隊の規律と風紀を守るためと言えば公式の命令。この入り組んだミーナの複雑な感情を序盤で上手く伏線張っている。宮藤への手紙を取り上げられた赤城の少年兵はお気の毒な役回りで、半舷上陸中かもしれないが、基地への無断潜入は営倉送りでもおかしくない。
赤城艦長から宮藤への招待を遠まわしに遠まわしながらピシャリと断る気合は、さすがのミーナ隊長。尻をキュッと締めたに違いない。
ウィッチ隊員と整備員の関係をベタベタと描くと話がブレるし、また偽スカガと言われるから、ミーナ隊長の命令をを使ってバッサリ切り捨てたのは妥当な演出。
赤城艦長もプレゼントに扶桑人形を持ってきたのは良いが、あれは現代ではフィギュアと呼ぶ。海軍なのに、なぜか扶桑陸軍スオムスいらん子中隊派遣の穴拭智子のフィギュアなのは、ヤマグチノボル小説版とのコラボか。でも無理やりな気もする。
久しぶりに宮藤とリーネの絡みも復活して、なんだかリーネの怪しい百合オーラが発散されている。
リーネ「兄弟以外の男と話した事がない」--->「私は処女よ」サイン
手紙渡される宮藤に「ラブレターじゃない?(はーと)」
風に舞う手紙を追いかける宮藤と少年を見て「わぁーっ!(はーと)」
そんなリーネの気持ちも知らずに、芳佳ちゃんはフリーダム…
久しぶりに戦闘パートを堪能。
サイコロ分裂タイプのネウロイ空襲に、主メンバーが迎撃に上がる。細かいのも1機と数えれば、エーリカはじめ撃墜数が伸びるのも納得。
以前「時間がない」とミーナが伏線を張っていたのは坂本の魔法能力の事だろう。今回はミーナの話であると同時に、部隊内での坂本の進退に関わりそうな話でもある。
今回の空戦でも太陽を背にした敵本体の発見が遅い感じで宮藤の援護に助けられたり、爆発したコアのシールド魔法も一部破れたりと、失点が見られる。必死に訓練を欠かさないのは自分の能力を維持するためであろうし、訓練と実戦を通じて経験を宮藤に伝えようとしているかに見える。
今回は、その宮藤が難しい敵の動きを捕捉して戦果を上げた。
自身の能力の限界を感じる坂本と、成長する宮藤の世代交代のきっかけになるであろう、今回の戦闘。
ミーナの過去はカールスラント組は知っている。大陸寄りで行われた今回の戦闘後に、ミーナ隊長が見下ろすのは廃墟となった港。
彼女の回想はネウロイから追い詰められたカレー軍港だろうか、最後の砦も落ちる間際。ミーナの恋人だろう。音楽家みたいだがミーナといられる前線を志願。ミーナが暖炉にくべたドレスの代わりのプレゼントを用意したまま、再会する事なく死んだのだろう。車に残された包みを抱いて戻るミーナ。多分この時点で、過去への想いを引きずらない決意が出来たのだろう。
反抗作戦へ出港する空母赤城への見送りを、坂本・宮藤・リーネに許可したミーナ。
無線回線を通して赤城に流れる、ミーナのリリー・マルレーン。彼女が着るドレスは、あの包みにあったプレゼント。兵士たちへの励ましの歌として史実にシンクロさせた脚本は、鈴木貴昭のこだわりだろう。リリー・マルレーンも回想パートの演技も、今回は田中理恵を堪能すべき回。
帰投した宮藤がミーナの歌にやたらと感激するところを、「サーニャのピアノはどうした?」褒めろと半ば脅迫するエイラのポジションが好ましい。サーニャも音楽家の娘としての設定を生かして、ラストで話をさらって行く。
で、大団円と思ったが終わらないのが、今回の面白いところ。
一人夜空を見上げるミーナに坂本が声をかけたところで「今でも失うのが怖い。失わない努力をすべきなの」
拳銃の銃口を坂本に向けるミーナの言葉は、殺そうとするわけではなくて坂本の魔力が充分な事をを試すのか、引退を勧める脅しかわからないが、難しい処理を次回へとバトンタッチ。
次回第9話のシナリオと絵コンテは佐伯昭志だから、坂本の話は上手く仕上げてくれるだろう。彼のブログによれば、アフレコは全て終了した模様。
グロス制作はAICスピリッツで、大河原晴男の作監だったが良く仕上げている。キャラのエッジに「ご愁傷さま二ノ宮くん 」を感じさせる彼らしい癖も少しあるけれど、クオリティは高い。総作監に平田雄三がいるのも大きい。
脚本:鈴木貴昭、絵コンテ:林宏樹、演出:白石道太
主題歌のCDが届いたのだが、宮藤の歌うエンディング曲の音質の悪さはどういうこと?コロムビアさん。ドラムパートが30年前のモノラルラジカセで聞くようなこもり具合。「時代考証した結果、音質も昔風にしてみました」なんて言い出しかねないな。コロムビアのリストラが響いているのか、エンジニアが悪いのか。
貴重な収益源のアニソンを舐めているとは思いたくないが。
オープニングの方は、悪くはない程度の音質。石田よう子のコロムビアからのリリースは久しぶりかな。パイオニアLDC時代からずっとジェネオンが長かった。

ミーナ中佐の中の人によると、
DVD ストライクウィッチーズ 限定版第1巻の特典表紙は、芳佳&みっちゃん。

COMMENT