幸薄い美咲さんのシナリオに区切りがついた感のある「WHITE ALBUM」第9話。
今話では由綺は重要な伏線を張ったようだが、理奈は姿もなく、はるかとマナも脇役を演じ、シナリオは迷うことなく美咲さんとの終幕に向けて突き進んでゆく。
学祭の演劇シナリオはパスしたものの、衣装・小道具の準備を押しつけられた美咲さん。あれだけ田丸の嫌がらせを受けながらも逃げない美咲さん。その理由がどこにあったのか、この舞台本番、正確には薄暗い照明室で演じられた芝居で全て明かされた。少なくとも美咲さんにとっては、自らの脚本全てが裏目となり呪いとなり降りかかった結末。
小道具の納品も、ゲネプロの舞台も決して一人では見ようとしなかった美咲さん。あれほど穏やかな人が感情むき出しに田丸とやり合うのは、本番の舞台を客席で冬弥と二人で見ることに拘ったからだ。
一人分だけでも有料でチケットをとろうとする冬弥に「よして、田丸君の言いなりになんか」と美咲さんこそ田丸のいいなりに見えて皮肉に聞こえるが、この日のために面従腹背で耐えてきたのだとすれば納得が行く。
席が取れなくとも、驚くべき行動力で倉庫の鍵を借りて照明室への進路を切り開く美咲さん。あくまで冬弥と二人で舞台を見るために。
彰の話を冬弥から振られて、逃げるような美咲さんの行動が立てかけてあった鉄パイプを倒し、舞台にもとどろく音響。そこで語る美咲さんの第4幕「不潔でよこしまな恋」に、彼女の気持ちが全て含まれている。
「きっかけは詩集・演劇台本・デザイン画・勘違いする・妄想が募る・後輩の彼女に嫉妬する・彼女の先輩に嫉妬する・彼女を裏切る・嘘をつく・後輩の友人の気持ちを知りながら受け入れることができない・なぜなら後輩は後輩に後輩を私を…」最後の言葉は冬弥の口封じのキスで止められてしまった。
それは嘘、シナリオを舞台に掛けるために冬弥を利用したと身を引こうとする美咲さん。それはキスをした冬弥へ送る免罪符にも見えるが、彼女の保身でもある。決して女神ではなく、いじましくも可愛らしい生身の彼女を演出するシーンだ。
今回の舞台シナリオ自体に今語った冬弥への想いの暗喩が込められているのか定かでない。ただ、冬弥に本番を見せたい、一緒に見たいと思ったのは自分の作品の成果を見てもらいたい以外の何かが込められていたのだろう。冬弥の気を惹き、同時に田丸を貶めるダブルトラップが美咲さんのシナリオに込められていたとは考え過ぎかも知れない。
照明室での事故で、図らずも美咲さんは冬弥一人のために自分のシナリオを自分で演じる、それこそ自作自演の最悪の芝居となってしまった。冬弥が去ったあとに現れた神父姿の彰からの告白、堕ちた女神には追い打ちを掛ける罰となった。彼女が自責の念から解放されるフォローを望むところだ。
あまりにも無自覚に接してきた冬弥だが、美咲さんに告白されてみて初めて悩む始末、そしてつぶやく「どうしよう、由綺」
その由綺とはスタジオでのぎこちない出会いのあと、学祭のステージに出演していたのに、またもすれ違う冬弥。由綺からの電話もすれ違い。そこで由綺が手紙に託す内容は何か?
楽屋で書き終えて、弥生さんの問いかけに「もう済みました」と吹っ切れた表情に、またすれ違いのドラマの予感がする。学祭ステージでの「お知らせ」と関係するのかも知れないが、そもそもお知らせの内容は作中では明かされない。クリスマスイベントだろうとは思うが。
美咲さんの区切りがついてもドラマは由綺へと向かわずに、次回ははるかの出番のようだ。
制作は銀画屋のグロス。コンテ・演出は岸川寛良、作監は岡野幸男、杉藤さゆり。
DVD/BDは「制作上の都合」で1ヶ月延発だが、きちんと仕上げてくれることを期待したい。
作中でマナの勉強部屋のシーンでラジオから流れていたが、中山美穂のカバー「ツイてるねノッてるね」が由綺のキャラソンとして収録されるようだ。原曲発売も1986年で同時代性を感じさせるし、同じキングレコードだから好都合なのだろう。


![WHITE ALBUM VOL.1 [Blu-ray]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/5131uHLJrGL._SL75_.jpg)
![WHITE ALBUM VOL.1 [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51zT7BU7MSL._SL75_.jpg)

COMMENT