黄鉄鉱取引を背景に、ホロを巡るアマーティとの決闘。絶望の淵で一筋の光明を見出したロレンスの奮闘を描く「狼と香辛料II」の第5話。サブタイそのままに、ロレンスは希望と再びの絶望の淵を見る。黄鉄鉱取引と、かけがえのない「積荷」の争奪、いずれも勝たねばロレンスには商人として経済的な死と、男としての精神的な死の両方が待っている難しい勝負。
前話でロレンスはアマーティに黄鉄鉱の空売り(先物取引)を仕掛けた。魚商人のアマーティには若干不利な気もするのだが、地の利と人の利はアマーティにだってある。流れ者の行商人よりは有利でもある。町商人と行商人の心構えの違いはマルクがさんざんロレンスに語っている通り、勝負に臨むロレンスの行動の伏線でもある。ただし女心(賢狼の心)の機微に鈍いロレンスが、この面をおろそかにすると足元をすくわれる。
今回はマルクの応援が目立つ。表立って動きにくい町商人とはいえ、彼のルートはまんざらでもない。友人とはいっても商売相手に過ぎなかったロレンスとマルクの関係がいっそう深まっている。マルクの言葉にあるとおり、単に偶然であった狼の化身との出会いを今ではかけがえのないものとして走り回るロレンスの姿をマルクも認めたと言うことだろう。ところが当のロレンスは本質的なもの、この舞台の主役が誰であるのか忘れている。「この物語の主役はお前なんだ」と、マルクを演じる小山力也のセリフは心に響く。
明日夕刻の決済期限まで、アマーティに売る黄鉄鉱を手に入れるため、再びディアナへの仲介をバトスに頼むロレンス。片方に肩入れするのもためらわれると言うバトスの首を縦に振らせたのはロレンスの商売への熱意よりも、人生において決断すべき瞬間であることが伝わったためだろう。
ディアナとの合言葉をロレンスに伝えるバトス。そしてそれを聞いたディアナ。合言葉の内容自体に意味はなく、それを授けた人物は既に相手を吟味している。言い換えると、合言葉を伝えても良いと信用した人物だとの含蓄に味わい深いものがある。
ただトレニー銀貨400枚分の黄鉄鉱は先約者あり。ロレンスに予約済の黄鉄鉱を譲るか、交渉は全てディアナ任せにするしかない、非常に尻のすわりの悪い状態でディアナの下を辞するロレンス。先約者が誰であるのか、ディアナはどう動くのか、ロレンスの勝負に大きな影響を与えることになる。







町商人たちが小遣い稼ぎに買った黄鉄鉱も、相場急騰でおおっぴらに売るに売れなくなっている。そんなルートでマルクはトレニー銀貨370枚分の黄鉄鉱の売り手をキープしている。
ロレンスの策としては、買い板のみで気配値だけが切り上がる相場に、大量の売り玉を浴びせて急落を仕掛け、アマーティの持つ黄鉄鉱の価値を屑にする算段だと思うが、マルクルートだけでは玉が足りないだろう。取引開始前の板は、見るまに買い枚数が増えてゆく。ディアナルートのトレニー銀貨400枚分の行方が左右する。売り仕掛けのタイミングも場が開いた早々では難しそうだ。小僧のラントの役目が微妙な勝負を分けそうだ。祭りの終わり、人々が熱気から目を覚まし現実に気付く時は近い。
しかし引きのシーンは早々に信用買いの代金を場が開く前にロレンスに渡すアマーティの先制パンチ。これはロレンスも意外だったようだ。CODでかまわないものを、わざわざ先にリマー金貨14枚(トレニー銀貨300枚相当)で渡す余裕。残りの200枚は夕刻に決済のつもりかな。
銀貨ではかさばるからと恩を売り、両替手数料を負担してまでの余裕。狼狽し枚数を数えない、契約書を返さないところをアマーティに指摘される始末のロレンス。
これで夕刻までにロレンスは昨日の価格でトレニー銀貨500枚分の黄鉄鉱を用意しなくてはならない。しかも相場は刻々と値上がりしている。青天井の決済の恐怖が空売りにはある。
これでロレンスは、明日の場が閉まるまでにアマーティの黄鉄鉱資産を屑にし、ホロの身請け代金トレニー銀貨1000枚の支払いを不可能にする以外に勝ち目はない。
負けると、トレニー銀貨500枚分の黄鉄鉱(昨日より値上がりしていればロレンスの持ち出し)に加え、マルクとディアナの黄鉄鉱の決済も迫られることになる。
無表情なホロの姿に、バトル開始前に既に心理戦で追い詰められたロレンスがいる。
策は上出来だが、ゲームの差配に出だしで躓いたロレンス。そんな時、今までなら横にホロがいてアドバイスしてくれたことを改めて噛み締めずにはいられない。
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