軸がブレているわけではなけれど、主人公を主人公らしく振舞わせる何かが足りない「シャングリ・ラ」も終盤に向かう第19話。
主人公が向かうべき敵があいまいなまま、ここまで来てしまった影響は大きいだろう。アトラス公社と涼子を悪=仮想的として序盤を展開するのは理解できるし、そこに炭素経済やメデューサシステムの存在を背景に、アトラスの後継者選びとアトラス建設の秘密を織り交ぜる。なかなか魅力的で無理のない構成だと思うのだが、仕上がったフィルムに魅力を感じないのは何故だろう。アニメオリジナルらしい女子収容所脱走事件はともかく、シリーズ構成にも奇怪な感じはない。各話シナリオ打ちが甘いことと、演出に熱が入っていないのかもしれない。
主人公と周囲のキャラクターが動き回っても、何で楽しくないのだろう。そういえばこのシリーズを見て笑った記憶がない。
トリプルAランクの3人は後継者候補であることを知っていたり知らなかったりと、アトラスの秘密を知る一部の人間の掌で動いているだけ。視聴者も制作の都合に知らずにつき合わされている。
秘密として伏せておくべき設定と、今後の展開への伏線であることとは似て非なるものだと考えるが、現場の都合で混同して扱っているように感じられて仕方がない。もしくは視聴者に混同させるような作り方をしている。主人公と後継候補が輝かなくては、視聴者も鬱々と話を追いかけるしかない。
今回は異常繁殖したダイダロスを焼き払う東京空襲。
他国の軍隊をレンタルまでして、焦土作戦に踏み切った國子の決定プロセスが見えてこないから、ひたすらただ耐えるしかない。避難民も視聴者も。
モモコの別れの予感、日本書紀を暗唱しだす凪子など色々盛り込んでいても気が削がれる。アトラス内の避難民の誘導で友香の成長を見せているが、スペースの詰め方はまだまだ甘い。コミケスタッフなら10倍以上詰めることが出来そうだ。
空爆の東京、ドゥオモへの焼夷弾投下ボタンを押す國子のシーンから、焼け落ちる街の光景に鳴り響く時計塔の鐘の音とバラードアレンジのオープニング曲が流れるレクイエムのような感傷たっぷりの演出。
焦土と化した東京に新たな謎が浮かび上がり、アトラスは第8層にダイダロスの繁殖の憂いを残し、この爆撃のCO2排出で日本は炭素経済の敗者となり、大儲けした香凛も国連の対メデューサ法とメデューサの暴走でピンチと、次への沢山の伏線をばら撒いた。
この1話にフォローとチェンジ、承と転を受け持たせたのには無理があると思う。感傷的にエンディングに引いた方が良かっただろう。

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