演出的には後半シリーズからすれ違いの手法を変化させている。前半ではあれほどすれ違いの象徴だった家庭電話機や公衆電話も、ドラマの進展と共にショルダーホンや自動車電話、留守番電話とハードウェアの進化を見せ、登場人物たちは使いこなしている。しかしそれで心の絆が深まったと言えば嘘になる。便利な道具はあっても、目の前の人間関係に戸惑い、整理をつけられない人たちの群像劇がそこにある。
シリーズ後半からは喋らないことと喋れないこと、聞かないことと聞こえないこと、見ないことと見えないこと、これらをキャラクターのすれ違いを演出する手法に多く使い始めている。
特徴的なキャラクターによって、物語の要点を暗示する手法が後半シリーズでは多く見える。声優をキャスティングしていないが、それなりに登場回数も多く、重要な場面に顔を出すフランキー(フランク長瀬)などは表向きは鄙びた喫茶店を営みながら、裏では緒方英二の分身のような役回りを演じる。喋らないというよりも制作者が「喋らせない」理由は、彼の言葉は緒方が全て喋っているからだ。フランキーに話しかける緒方は、もう一人の自分に独り言を喋っているだけなのだろう。緒方の自問自答も天才ロックスターの成功の道程では彼を励ました。しかし今ではもう一人の自分とすれ違いを見せていることに天才プロデューサーは気付いていなかったのではないだろうか。彼の周囲の細かなひび割れに気付かないのと同様に。
喋らないといえば、なつこも同じ。彼女の才能は決して表に出るものではなく、あくまで松山めのうの才能があってヒッソリと輝くものだからだろう。二人の馴れ初めは語られていないが、信頼関係が揺らぐことがなければ二人はこのまま。この先で波乱を起こすとすれば、なつこが誰と一緒であれば最も輝くか、トップアイドルに輝くべきは誰なのかを計る重要な無口キャラクターだ。
マナの母親がMスリーの神埼であること、その神埼の元に理奈の付き人として移ってきたのが冬弥であることをマナの前で明かした。母娘二人の姓が違うのは父親の存在に秘密があることを匂わせてはいるが、大きな問題ではないのだろう。
しかしここで見せたマナの狂乱は「勝手な大人の事情」が彼女を悩ませ続けていたことを示唆している。
「森川由綺と付き合っている」「緒方理奈の付き人」だという冬弥をさんざん「イソップ」とからかい、冬弥の話を聞いていなかった。由綺や理奈のラジオも冬弥から遮り、自分はヘッドホンをかけて彼の話を聞くつもりのない仕草に、これまでのマナが理解していた冬弥像が明確に現れている。
しかし目の前に冬弥の話の証人が現れ、それが母親だというショックは大きい。しかも以前から母親や大人を信用していないマナはますます聞く耳を持たず、ひび割れは大きくなる。事態に楽観的な冬弥だが、「はるか先生」の元に向かわなかったマナの消息は先に引っ張った。
他のキャラクターたちも様々な動きで舞台を賑わしている。
田丸復活の線はまたしても美咲に絡むのか。姿を見せていなかった間の彼が描かれているが、ジャーナリストを気取った金持ちの放蕩息子。親は政治家だろうか。金で田丸の悪行をもみ消しているが、美咲にも金を渡して傷害事件をチャラにしたと見える。
弥生のストーカー平良木とも絡ませたが、強いて必要な設定でもない。そもそも何で田丸が弥生のストーキングに気付いたか不明だが、平良木のストーキング状況の聞き手になっているだけだ。平良木も田丸の言うとおりアイドル由綺と冬弥を狙えば良いのだが、田丸が利用して冬弥を脅す線でもあるのかもしれない。顔芸の多彩さは相変わらず。
エスケープしていためのうがスタジオに戻るきっかけは、二人の会話で聞いた由綺や弥生と冬弥に関係するのだろうか。
オヤジは相変わらず思わせぶりだが、テニスボールと復活したはるかに関係があるのかないのか。晴れ着の由綺を自分の妻に見間違えたのは伏線なのか違うのか。緒方が一度崩壊して毒気が抜けた今となっては、最も食えない奴はこのオヤジかもしれない。
今回はアナログ放送録画のため、キャプチャーは無しで。
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WHITE ALBUM キャラクターソング POWDER SNOW (緒方理奈)WHITE ALBUM キャラクターソング タイトル未定 (森川由綺)WHITE ALBUM サウンドステージ01
COMMENT
無題
同一の人物とは言えないような気もします。
Re:無題
>同一の人物とは言えないような気もします。
ご指摘ありがとうございます。由綺の姿に彼女の未来を見たのか。演出意図は図りかねますね。