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Aパートを夢オチと言ってしまうのは間違っていると思う「はなまる幼稚園」の最終話。
杏が夢の中で素敵な物語のヒロインになるのはクリスマスの晩、それもまだパーティーが始まる前のことだ。
そんな夢をみる伏線がちゃんと昼間の幼稚園の光景に隠されている。杏の家でのクリスマスパーティーに招かれたことを、恋のライバル山本先生につっちーが話しているのを見た時の杏のしょんぼりした顔。年少の園児がそんな感情など持つわけがないと言ってしまうのは寂しい。何歳であっても女性は女性なのだという事実を拡張して見せているに過ぎない。

杏が大人の女性に憧れるのは桜さんの教育あってでもあるだろうが、やはり仮想敵の山本先生の存在が大きい。でも単にライバル視しているだけでないことは、Bパートでフォローしてくれる。
夢の中で大人の女性に変身してクリスマスの街を歩き、大切な誰かと会うためにバスに乗る杏。クリスマスプレゼントの交換の前に、魔法の国のサンタがくれたささやかな夢。目が覚めたら忘れているかもしれないし、大人になったら覚えていない幼い頃の一瞬の夢の世界をクリスマスの街に再現してくれた。
大人になった杏は桜さんそっくりで、つっちーの視点ではかつて中途半端な想いで終わってしまった桜先輩への密かな想いが、その娘で成就したと思うと僥倖。
だが、男視線で杏のこの夢をフォローしない方が良いかもしれない。




そんなつっちーが、かつて桜さんにかけた励ましの言葉が、杏を通して自分へと帰ってくる親子2代物語のBパート。
杏の父の個展に招かれた会場で桜さんの馴れ初めに話が弾んで、美術教師との恋愛に背中を押した結果となったつっちーの思わぬ過去のお話。桜さんに恋していたのに結果として応援した形のつっちーだが、山本先生への気持ちを後押ししてくれるのは今度は杏という巡り合わせ。この母にしてこの娘あり。
山本先生ともう少し話していたかった帰り道、どうせ釣り合わないとあきらめかけるつっちーを励ます「想いは伝わる。好きって気持ちはなにより強い」との杏の言葉は、かつてつっちーが桜さんにかけた言葉。杏の表情の変化を見ているだけで胸が熱くなるシーンだ。
勇気を奮って駆け戻ったつっちーの告白に、半人前じゃなくて一生懸命やってると返す山本先生に、ツッコミどころはそこじゃないよ！と全国の山本先生ファンが呻いたに違いない。
第2期があるのならば、つっちーの教育よりも山本先生の恋愛サーキット改造計画を進めないといけないと思う最終話の引きの見事さだった。




総評めいたことを書いてみるが、ガイナックスで幼稚園ものと聞いた時の違和感は話が進むにつれてすっかりなくなった。クリエイター主導で尖った作品になるのではないかとの懸念も、それはエンディングでの自由さにとどめて本編はホンワカと保っていた。
子供の世界を描いているようでいて子供を鏡にした大人の世界を映し出し、懐かしかったり身につまされたりと見所に事欠かないシリーズだった。
ガンガン作品で2期あることは少ないかもしれないが、ぜひ杏たちの成長や成長のしなさと同時に、鉄壁山本先生のその後を見たいと思う。



DJCD はなまる幼稚園 らじお組 いち